外国人観光客が増加しない原因とは?訪問の目的と理由の分析が必要
2016/12/29
前回は、日本の経済成長を伸ばすための方法として、外国人観光客を沢山呼び込む案を取り上げました。今回は、デービットさんの具体的な提案内容です。
「デービット アトキンソン 新観光立国論 イギリス人アナリストが提言する21世紀の所得倍増計画 東洋経済新報社」デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
外国人観光客を増やし、またリピート率を増やす方法とは?
観光客の受け入れ側が、外国人観光客を受け入れる体制を整えることが大事です。(外国人に対してだけでなく、日本人観光客に対しても同じです。)今は、とても観光客にとって魅力的な観光施設を提供しているところは少ないです。
例えば、よくある伝統文化の施設(寺院や昔の建物)は、ただ単に建物をそのまま保管してあるだけのことが多いです。そして、施設を見学するために入場料を取り、あとは建物をぐるっと回って見学させるだけです。これでは、「なんだか、立派な古い建物を見たな」といったくらいの印象しか持たず、なんのことかよく分からない感想しか出ません。
日本人の私たちでさえも、寺院などを訪問しても、「誰がいつ作って、どんな意味のある建物か」なんていうのを分かって見学している人は少ないと思います。外国の方なら、なおさら意味が分からないでしょう。
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観光客を集めるためには、結局これが必要?
著者のデービットさんの改善案としては、
・古くなった観光施設の整備・改築を行い、観光客に見せるための努力をすること
・外国の人が理解出来るように、外国語での説明パンフレットの充実、通訳ガイド者の配置
などを挙げています。
本書では、もっとたくさんの提案をしていますが、ここでは2点だけを挙げました。
では、上記2点を実行するには何が必要か?はい、それはお金です。観光客を集めるためには、お金を掛けて、観光客の受け入れ側が積極的に設備投資・人員投資をする必要があります。
デービットさんは、「もっと観光業をお金を掛けないと、日本の観光業は発展しない」という警告を発しております。
観光大国に必要な4つの条件
デービットさんは、観光客を引き寄せるのに重要なポイントを4つ挙げています。
それは、
気候、自然、文化、食事
「これらの4つの条件が、それぞれ魅力的でないと観光客は集まらない。この中のどれか一つだけをアピールした場合、ある程度の客は集まるが、やはりそれだけでは弱い」と言っています。
また、大事なことは多様性です。その代表例が、外国から多くの観光客が訪れるニセコのスキー場を取り上げています。ここには、外国人受けするような夜スキーの開催、バーやクラブ、日本料理以外にもイタリア・中華などの食事を用意。長期滞在用のサービスアパートやコンドミニアムを用意。積極的に外国人の誘致に取り組んでいます。
外国人観光客にとって重要でない要素とは
逆に、外国人観光客にとって、日本観光で重視しないポイントとは、
・治安が良い
・電車の時間が正確である
・日本人はマナーがいい
とか、そういうのは関係ないとデービットさんは言います。
日本に定住するなら、大事なポイントですが、短期間滞在するだけの観光であれば、そんなに重要ではないらしいです。
でも、日本人が外国に観光する場合、これらの要素は重視しますよね?その理由を考えてみました。
それは、日本はどんな外国に比べても「治安の良さ、交通機関の正確性、マナーの良さ」は、世界トップクラスだからだと思います。だから、日本人が外国に行く際には、これらの要素は重要です。だって、自分の安全・命に関わる問題ですからね。
でも、外国の人からすると、そもそも「日本は自分の国より、治安など悪くないだろう」という印象を持っていると思います。なので、それらの点をアピールしても、外国人の方には付加価値のある魅力には感じないのかもしれません。
余談:ゴールドマンサックスのアナリストの分析方法
本書の本筋とは関係ないですが、観光業の分析をするにあたって、デービットさんは常に統計データを用いています。
例えば 人口当たりの国別のGPDの計算、 国別の観光収入ランキングといったデータを並べて、「こういうデータが出ているから、世界の中で今、日本はどのような位置づけにあるのか」そして、「どの部分に集中してお金を使って行けばいいのか?」というようなことを分析して提案しています。
このように、客観的な数値データを用いて現状把握と対策を考える手法は、私たちも見習う必要があると感じます。
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まとめ
結局は、待ちの姿勢ではダメで、外国人をいかに受け入れるかということを真剣に考えることが一番大事です。別の言い方をすると、他の観光施設との差別化が大事ということです。
デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
P.S.
差別化と言えば、藤原和博さんも差別化の重要性とその方法を話されています。
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